2006年11月 7日 (火)

キャラバン~人生の深みを感じさせる素朴で味わい深い映画~

Photo_49 キャラバン 

2000年のフランス、ネパール、スイス、イギリス合作映画

監督;エリック・ヴァリ

撮影;エリック・ギシャール、ジャン=ポール・ムリス

出演;ツェリン・ロンドゥップ、カルマ・ワンギャル、グルゴン・キャップ

ネパールの高原に拡がる麦畑。

その麦畑で一人の少年(パサン)と村の長老であるパサンの祖父(ティンレ)が会話を交わしています。

一面に拡がる麦畑に驚くパサンに対して、これだけでは村の人が生きるには不十分なのだと教えるティンレ。

そこにキャラバンと呼ばれる一行が村に帰ってきます。

キャラバンとは、村の人々が村で生産した塩をヤクに乗せて、麦と交換しに出かける一行のことを言うのですが、その旅は容易ではありません。

この日も帰ってきたキャラバンを出迎えた村の人々を悲しみが襲います。

キャラバンを率いる中心的人物で長老ティンレの息子が旅の途中の事故で亡くなってしまったのです。

悲しみに暮れる村の人々の中で、長老のティンレだけは、息子の死が息子の友人で、キャラバンのもう一人の中心人物カルマの仕業であると主張し始めます。

カルマは優秀なキャラバンのリーダーなのですが、なぜかティンレはカルマが長老の座を狙って息子を殺したと言い、次の長老の座は幼い孫のパサンに譲り、次のキャラバンもティンレが後見人としてパサンを連れて行くことを村の人に訴えます。

しかし、長老のティンレ自体も長くキャラバンから離れた生活を送っている上に、あまりにもパサンが幼いことに村の人々は困惑してしまいます。

そうしていくうちに次のキャラバンの日が近づいてくるのですが、キャラバン出発の日は古くから占いで決められていました。

カルマはそんな村の慣習やしきたりに抵抗を感じており、占いの日よりも早く出発することを主張し、村の若者たちはカルマと行動を共にしキャラバンに旅立っていきます。

村には長老のティンレをはじめ、年老いた者たちばかりが残されるのですが、ティンレは孫のパサンや年老いた古くからの友人を連れて、占いの日に旅立ちます。

ティンレの一行はカルマよりも4日ほど遅れた出発である上に、同行している者たちは年老いた者や幼い子供、そしてティンレ自体も年老いた体であるために、なかなか旅は思うように進みません。

すぐに疲れたとかお腹が減ったと言い出す者や、村に引き返すことを主張する者、ティンレ自身も身体が思うように動かない時もありますが、なんとかカルマの一行に追いつこうと旅を続けます。

又、ティンレよりも早く旅立ったカルマの一行も、村のしきたりを破って出発したこともあり、何か都合の悪いことが起こると、悪魔の仕業だと言い出すのですが、カルマはそんな迷信に囚われず旅を続けて行きます。

カルマとティンレ。

二人の新旧のリーダーに連れられた一行は、やがてヒマラヤの大自然の猛威にさらされていくことになるのです…

この映画は実際にヒマラヤ山脈で撮影を行ったようで、キャストも素人の方だと思うのですが、『本物の凄み』を感じさせてくれる映画というか、映像も美しいし、何よりも出演者の表情がイイなあ。

そしてこの映画は単に素朴さや美しさがイイという他に、ストーリーとしてもなかなか考えさせてくれるものがあったように思います。

まず、キャラバンという素材を使いながら、人生の歩み方を描いている点。

それと、カルマとティンレという二人のキャラクターを使って、その歩み方を象徴している点。

若く知的で現代的な考えをするカルマは、言ってみれば現代人の象徴。何事も科学的に考えようとして、古くからの言い伝えや教えよりも、自分自身を信じようとするタイプ。

それに対して、長老のティンレは、旧世代の象徴で、物分りが悪く、頑固で、神や自然に対して常に敬意を払っているような人物。

でも映画を観ていけば分かりますが、単にどちらが優れているとか劣っているということではなく、どちらも実は同じように重要なのだということを伝えようとしているようです。

映画が始まったときには、過去にとらわれ単に頑固で物分りの悪い老人に思えたティンレ。

それがキャラバンが進むに連れて、ティンレが単なる頑固者ではないことが分かり始めていくと同時に、カルマに何が不足しているのか?も伝わってきます。

そんなことが伝わる部分として、映画の最後でのカルマとティンレの会話を少し紹介しましょう。

(ティンレがついに長老の座をカルマに譲ることを伝え始めます。)

ティンレ;『お前に託す。忘れるな。長老は命令を下す。だが、それは神の命令だ。それを忘れるな。』

カルマ;『あんたが俺の実の父親だったら…』

ティンレ;『息子にしては、わしに似すぎとる。わしがいつも神託に従ったと思うか?反抗することから真の長老が生まれてくる。』

カルマ;『…』

秋の夜長に、ちょっとオススメの映画です。

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